デザインの仕事をしていると、
「AとB、どっちがいいと思いますか?」
と聞かれることがよくあります。
正直、困ります。
たぶん、どっちも正解だからです。
デザインには、数学のように「この答えが正解です」というものがありません。
赤を使ったから間違い、とか。
文字を大きくしたから正解、とか。
写真を丸くしたら80点、とか。
そんな採点基準があったら、デザイナーとしては少し楽なのですが、残念ながらありません。
でも私は、
「なぜ、このデザインにしたのか」は説明できるようにしたい。
と思っています。
「私はこっちが好き」で決めない
もちろん、デザイナーにも好みはあります。
私にも、好きな色があります。
好きな書体も、好きな余白の取り方も、好きなデザインの雰囲気もあります。
PinterestやInstagramを見ていて、
「これ、好きだなあ」
と思うデザインもたくさんあります。
でも、仕事としてデザインするときは、できるだけ「私が好きだから」という理由だけで決めないようにしています。
なぜなら、そのデザインを使うのは私ではないからです。
例えば、企業のパンフレットをつくるとします。
私自身は、余白がたっぷりあって、文字が少なくて、写真を大胆に使ったデザインが好きだったとしても、
そのパンフレットを営業先へ持っていき、事業内容をしっかり説明する必要があるなら、それが一番いいデザインとは限りません。
逆に、
「情報を全部載せたいです!」
と言われたとしても、本当に全部を同じ大きさで載せてしまったら、結局何を伝えたいのかわからなくなることもあります。
だから、
誰が見るのか。
どんな場面で見るのか。
最初に何を感じてほしいのか。
一番伝えたいことは何なのか。
見たあとに、どうしてほしいのか。
そういうことを考えながら、ひとつずつ決めていきます。
「かっこいいから」では、ちょっと足りない
デザインを提案するときも、
「こっちの方がかっこいいと思います」
だけでは、なるべく終わらせないようにしています。
もちろん、最終的には「なんかこっちの方がいい」という感覚も大切です。
デザインなので。
全部を理屈だけでつくったら、それはそれで少し面白くない。
でも、その感覚の裏側に、
「こちらの方が視線が最初にここへ向かうから」
「この会社の強みを考えると、こちらの見せ方の方が合っているから」
「この写真を大きく見せた方が、サービスの魅力が伝わるから」
「ターゲットを考えると、こちらのトーンの方が安心感につながるから」
という理由がある。
私は、その状態が理想だと思っています。
「もっと目立たせたい」にも、理由がある
制作をしていると、
「ここ、もう少し大きくできますか?」
「もっと目立たせたいです」
「なんとなく、ここが寂しい気がします」
というご要望をいただくことがあります。
こういうときも、言われた通りに大きくする前に、一度考えます。
なぜ、大きくしたいんだろう。
情報が見つけにくいのか。
重要な情報なのに、優先順位が低く見えているのか。
周りに情報が多すぎるのか。
それとも、本当にサイズの問題なのか。
「もっと目立たせたい」という一言でも、原因はいろいろあります。
場合によっては、その文字を大きくするよりも、周りの情報を小さくした方がいいかもしれない。
色を増やすのではなく、逆に色を減らした方が目立つかもしれない。
余白を広げるだけで解決することもあります。
なので私は、いただいた言葉そのものより、
「なぜ、そう感じたんだろう?」
を考えることが多いです。
デザインは、選択の連続だと思う
色を決める。
書体を決める。
文字の大きさを決める。
写真を決める。
写真の大きさを決める。
余白を決める。
配置を決める。
情報の順番を決める。
デザインをつくっていると、本当にたくさんのことを決めます。
ひとつひとつは小さな選択ですが、その積み重ねで最終的な印象は大きく変わります。
だから私は、
「なんとなく、この方がいい」
で終わらせず、
「なぜ、この方がいいと思ったんだろう?」
と、一度自分に聞いてみるようにしています。
すると、
「こっちの方がなんとなく好き」
だったものが、
「こっちの方が、この会社らしい」
に変わることがあります。
この違いは、結構大きいと思っています。
正解は、一緒に探していくもの
とはいえ、私が出したデザインが絶対的な正解だとも思っていません。
デザイナーには見えていないことを、クライアントの方が知っていることもたくさんあります。
会社の歴史。
お客様との関係。
社内で大切にしていること。
これから会社をどうしていきたいのか。
そういったものを聞いて、
「じゃあ、この表現の方がいいですね」
と、最初の案から変わることもあります。
それでいいと思っています。
デザイナーが自分の作品をつくることが目的ではなく、
その会社やサービスが、本来持っている良さを伝えることが目的だからです。
デザインに、ひとつだけの正解はありません。
だからこそ、
「なぜ、これなのか。」
を考える。
クライアントと話して、考えて、つくって、また考える。
そうやって一緒に「これが私たちらしいですね」と言えるところまで辿り着く。
私は、そんなデザインのつくり方が好きです。